「起承転結の起を丁寧に」月光斜「スタート!!」演出インタビュー ー立命館三大劇団夏公演特集③

6月26日~28日の3日間、劇団月光斜の2014年度かけだし公演「スタート!!」が上演されました。

エンターテイメント色の強い舞台を得意とする月光斜ですが、今回はなんと現代劇。
「偉大な先人たちより受け継ぎし、知恵と勇気を胸に、若者は一歩踏み出す。愛する家族との別れ、新しい仲間との出会い、-今、新たなる冒険が幕を開ける!」という冒険活劇のナレーションから始まるのですが、実はこれ、劇中劇です。
冒険ドラマを撮影している現場での物語が『スタート!!』なのです。以下があらすじになります。

あらすじ
舞台は、人気俳優の斉藤和哉が主演の冒険ドラマの撮影現場。昼休みに、一般オーディションで選ばれた青木祐介が遅刻してやってくる。旧知の仲の二人は再会を喜ぶが、斉藤はどこか浮かない様子。遅刻した青木は他のキャストに挨拶周りに行く中で、それぞれが「他人からの評価」に対して悩んでいることを知り、それに対して青木なりの励ましをする。キャストたちの知らないところで、監督やプロデューサー達も作品と視聴者の関係に悩む。主人公の斉藤も「他人から求められる斉藤和哉像」に苦しむが、かつて青木と演劇をやっていた時の思い出や、マネージャーに背中を押されて吹っ切れる。他の登場人物もそれぞれの悩みにけりをつけて、昼休み後の撮影を張り切って迎える。

今回の舞台はダブルキャスト制。Team RedとTeam Blueの二つに分かれており、それぞれがほとんど同じ台本で3ステージずつ演じました。
衣装や音楽もチームごとに違うなど、全く違う舞台として作り上げられた今公演。どこにこだわって作られたのか、作・演出を担当したれいこさんにインタビューしました!

公演お疲れ様でした
はい、お疲れ様です
公演を終えての率直な感想をお願いします
率直に言うと、はい、疲れましたー(笑)!すごい疲れたんですけど、楽しかったです、はい。とっても楽しい公演でした!
「他人の目を気にしている人間」が多く登場する脚本ですが、こめた思いとは?
私が他人の目を気にしてしまうタイプなんですよ。で、昔はそれをよくないと思ってたんですけど、今はそうでもないと思ってて、他人の期待に応えようとするのはそれはそれでありなんじゃないか、っていう個人的な思いプラス私は芝居を作るのが好きなんですけど、それ自体を芝居にしたらどうなるんだろうって冒険も兼ねました。
あと、今公演は一回生にとって初めての公演なんですが、一緒にやっていくうえで「芝居ってこんなに楽しいんだよ」っていうのを伝えられたらと思って、書きました。
どんなところを目指して書きましたか?
演じている方も観ている方も「これは嘘だけど、『本当』が隠れている気がしてならない」っていうところを目指しました。
やっぱり役者さんにとっても「あるある」なんですか?
わりと共感できると思っています。この作品の中で山本梨香っていう芝居に初めて挑戦する役があるんですけど、「とにかくやりたい」って気持ちを持ったことのある人なら、演劇経験に関わらず分かると思います。
この作品って、起承転結の起をめっちゃ丁寧にやる話になってるんですよね。「ここから始まる」っていう話なので、これを見た人に「俺も頑張ろう」とアクションを起こしてほしいと思っています。
この脚本に対する他の団員からの反応はどうでしたか?
もしかしたらみんなはエンタメがやりたいんじゃないかって思ってたんですけど、意外に『新しいこと』をやってみたいと賛同してくれる人が多かったです。新しい代だからこその自分たちのカラーを見つけるのもありなんじゃないかって雰囲気でした。
ダブルキャスト制にした理由はなんですか?
脚本が同じでも、人が違うと全然違うものになるんですけど、両方のパターンがもっともっと見たかったんですね、単純に。これからこの子たちはどんなふうにこの作品と向き合ってくれるんだろうっていうのが気になったので、ダブルキャストにしました。
RedとBlueの大きな違いとは何ですか?
やっぱり人ですね。人が違うと思っていることが違うし、それぞれの関係性も異なってくるので。(具体的には)Redは斉藤の成長、Blueは青木のめげない強さに焦点があてられている感じですね。脚本上では、それぞれのキャストに合わせたギャグシーンと、一番は回想シーンですね。同じ場面を別の部分に入れてます。Redは斉藤の葛藤を強調するために前半に入れて、Blueの方は青木の成長や斉藤に追いつけないという部分を見せたくて、割と後半、斉藤が立ち直った後に入れるというのをやってます。
今回苦労されたところや、こだわったところはどこですか?
こだわったところ…でもやっぱり、芝居をやるのが初めての人が多い中で、どうやって「芝居っていうのは楽しいんだ」っていうのをお芝居でやるっていう――二重構造みたいになってしまうんですけど(笑)、皆が思い切り楽しめるには何ができるかっていうのを、一番苦労しましたね。
6ステージで回を重ねるごとに変わりましたか?
もう全然違いますね。最初のステージと最後のステージだったら両チームとも全然違うものになって、本当にお客さんがいることによって舞台は成り立つものなので、その中でそれぞれが感じるものがあって、やっと最後のステージで初めて自分の役と向き合ってくれたんじゃないかと思います。
最後に、お客さんに何か一言お願いします。
いやーもう本当に見て頂けて幸せでした。本当にありがとうございました!これからも月光斜をよろしくお願いします!

新入生を迎え、新しい境地へとかけだした劇団月光斜。今後も卒業公演や学園祭など活躍の場が数多くあるので、興味を持った方は是非足を運んでみてください。

文:矢澤達也

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